「アジャイルで失敗したなら、AIでは壊滅的に失敗する」

アジャイルソフトウェア開発宣言の共著者、ジム・ハイスミスの言葉です。InfoQが2026年8月に公開した「Culture and Methods Trends Report 2026」で、議論のパネルがこの警告を引用していました。

25年かけても変われなかった組織に、AIが載る

レポートによれば、多くの組織はアジャイル開発の基本原則をいまだに働き方へ根付かせておらず、その欠けた土台の上に、AIが生み出すスピードを重ねようとしています。

パネリストのクレイグ・スミス氏の指摘はさらに辛辣です。アジャイルに移行するための25年という時間がありながら、その一歩を踏み出せなかった組織が数多くある。そうした組織が、1995年のソフトウェア開発を前提にした組織のまま、新しいプラクティスを取り入れようとしている、と。

AIは「増幅器」である

この指摘はデータとも一致します。Google CloudのDORAがまとめた2025年のレポートは、ソフトウェア開発におけるAIの主な役割を「増幅器」と結論づけました。AIは、成果を上げている組織の強みを拡大し、苦戦している組織の機能不全も拡大する、というものです。

検証の土台が弱いまま、AIの出力だけが増えている兆候もあります。Sonarの2026年の開発者調査では、コミットされるコードの42%をAIが占める一方で、開発者の96%はAIのコードを完全には信頼しておらず、コミット前に毎回検証している人は48%にとどまりました。

土台がないところにスピードだけを足しても、事故の規模が大きくなるだけです。

「アジャイルごっこ」が「AIごっこ」に変わっただけ

レポートで紹介されていた光景は強烈でした。小さなチームが、それぞれエージェントと黙々と働く個人の集まりにバラけてしまう。スタンドアップに集まっても話は噛み合わない。そして、AIが生成した47ページの文書を、AIで要約している。

パネルは、異なる視点や専門性を持つ人が考えをぶつけ合うことで生まれるチームの力が、一人プロジェクトの寄せ集めになると失われてしまうと警告しています。

「仕事をしている感」を出すのは上手くなったかもしれません。しかし、チームとしての学習は進んでいません。これでは「アジャイルごっこ」が「AIごっこ」に姿を変えただけです。

根付かなかった理由は、そのまま残っている

アジャイルが根付かなかった理由は、だいたい次のどれかです。

  • 納期とスコープが固定され、計画どおりに進むことが評価される
  • 組織が機能別に分断されており、「受け渡し」と「待ち」だらけ
  • 現場に決める権限がない

この構造のままAIを入れても、同じ理由で失敗します。しかも今度は、速く、大きく。

レポートも、本当に重要なプラクティスは変わっていないと強調しています。速いフィードバックループ、可観測性、出荷するものへの確信、そして正しい価値を正しい利用者に届けること。リスクも変更の単位も大きくなった今、これらの基本はこれまで以上に重要になっています。

順番を間違えない

だからこそ、AIを導入するなら順番はこうです。

避けたい順番:AIツールを全社導入し、組織のことは後で考える。

考えたい順番:アジャイルが根付かなかった理由を振り返り、構造を変えてからAIを載せる。

AI導入プロジェクトを始める前に、一度だけでいいので聞いてみてください。

「うちのアジャイル、なんで上手くいかなかったんだっけ?」

その答えが、AI導入がつまずく理由の予告編になっているはずです。

皆さんの組織では、アジャイルの失敗から何を学びましたか?

参考