アジャイルでは、チームワークが成果を大きく左右します。
しかし、現場に対して「もっと協力しよう」「自律的に動こう」と求めるだけでは、強いチームは育ちません。チームが一体となろうとしても、組織の仕組みがそれを妨げていることがあるからです。
代表的な問題が、複数チームの兼務と、プロジェクト終了時のチーム解散です。
「ボールを持っていないなら、別の試合に出ろ」
多くの組織では、人材を効率的に活用するために、一人のメンバーを複数のチームやプロジェクトへ参加させています。
一見すると、空き時間を減らせる合理的な方法に見えます。しかし、チームスポーツに置き換えると、その不自然さがよく分かります。
サッカー選手に対して、「ボールを持っていないときは、隣のグラウンドで行われている別の試合に出てください」と指示するようなものだからです。
サッカーでは、ボールを持っていない時間にも重要な仕事があります。味方がパスを出せる場所へ動く、相手選手を引きつける、守備に備える、試合全体の流れを読む。こうした行動があるからこそ、チームとして連携できます。
アジャイルチームでも、自分の担当作業をしていない時間は、何もしていない時間ではありません。
ほかのメンバーを支援する、次の仕事を準備する、顧客価値について話し合う、作業の流れを改善する。こうした活動が、チーム全体の成果を高めます。
メンバーが複数のチームを行き来すると、この共同作業の機会が失われます。仕事を切り替えるたびに状況を把握し直す必要があり、チームへの帰属意識や責任感も薄れます。
人を常に忙しくさせることと、チームが高い成果を出すことは同じではありません。
スポーツチームは試合ごとに解散しない
スポーツの世界では、一つの試合が終わるたびにチームを解散し、次の試合のために選手を集め直すことは通常ありません。
選手は練習や試合を重ねるなかで、お互いの特徴や判断の傾向を理解していきます。どの選手がどの場面で動くのか、誰がどのような支援を必要とするのかを学び、連携を高めます。
高い成果を出せるチームへ成長するには、時間が必要なのです。
ところが、多くの組織では、プロジェクトが終わるたびにチームを解散し、次のプロジェクトで新しいチームを編成します。
せっかく築いた信頼関係、共通理解、効果的な仕事の進め方は失われ、新しいチームは再び関係づくりから始めなければなりません。
これは、ようやく連携が取れるようになったスポーツチームを、試合が終わるたびに解散させるようなものです。
組織は「仕事に人を割り当てる」のではなく、「成熟したチームに仕事を割り当てる」という発想を持つ必要があります。
チームの努力だけでは変えられない
兼務やチーム解散の問題は、現場の努力だけでは解決できません。
長い承認プロセス、部門間の分断、曖昧な優先順位、個人単位の評価制度なども、チームワークを阻害します。これらを変えられるのは、経営層や管理職を含む組織です。
チームに高い成果を求めるのであれば、組織もチームが集中して働ける環境を提供しなければなりません。
チームだけを改善しても、組織の仕組みが以前のままでは、その改善は長続きしません。反対に、制度だけを変えても、現場のチームワークが育っていなければ成果にはつながりません。
チームと組織を一体として考え、両方を継続的に改善する。
それが、チームの力を組織の支援によって引き出すONE-AGILE®の中心にある考え方です。